健康保険で「遺伝子検査」が受けられる

 健康保険で「遺伝子検査」が受けられる日がやってきた

https://gendai.media/articles/-/121332?imp=0

がんにかかる人は増加しているが、死亡率は年々下がり続けている。

「がん治療」の進化が著しいことが大きな要因の一つだ。

一方で、患者側の最新医療に関する知識がアップデートされていないばかりに、手遅れになってしまうケースも残念ながら少なくない。


「薬が効くかどうか」を検査で調べられる

遺伝子タイプでがんを分類することは、治療上、大きな意味がある。


遺伝子の検査は健康保険で受けられる場合と、自費で行う場合がある。

現在、健康保険で検査できる遺伝子は、その遺伝子の異常に対する分子標的薬が保険収載されている場合に限られている。

言い換えれば、ある分子標的薬が効くかどうかを診断するために遺伝子の異常を調べる場合にだけ、健康保険で遺伝子の検査をすることができる。


このような遺伝子検査に用いる診断キットを、「コンパニオン診断薬」と呼ぶ。

コンパニオン診断薬で、ある遺伝子に異常があるかどうかを調べて異常があった場合、その遺伝子異常に合った分子標的薬を使った治療が標準治療となる。


薬が効かなくなる「薬剤耐性」問題

コンパニオン診断薬で該当する遺伝子異常がないとなった場合は、ほかの治療法を検討することになる。


残念ながら、分子標的薬を長く使っていると、だんだん効かなくなってくることがある。(がんの薬剤耐性)


薬剤耐性が起こるのは、がんが薬の攻撃から逃がれるために、遺伝子を変化させるからだ

たとえば分子標的薬は、異常を起こしている遺伝子からできるタンパク質の「ポケット」に結合して、そのタンパク質の働きを抑えるものが多いのだが、がんは遺伝子を変化させてポケットの形を変えてしまう。

そうなると分子標的薬は結合できなくなり、薬が効かなくなってしまうのだ。


ただし、薬剤耐性が起こった場合、変化したがんに合わせた別の薬を使える場合がある。


がんに関係する遺伝子は200~300個ある

現在の遺伝子検査は、がんの発生に関わる遺伝子異常を調べるものがほとんどだが、がんの進行や転移などに関わる遺伝子異常も知られてきており、がんに関係する遺伝子は200~300個あると考えられている。


一人ひとりのがんは、これらの遺伝子のタイプがみな異なり、「個性」をもっている。

がんの個性がわかれば、よりよい治療につながる可能性があるため、がんに関わる遺伝子を一度に調べて、がんの個性を明らかにしようという動きが始まっている。


そのために使われるのが、「がん遺伝子パネル検査」だ。


数十から数百個もの遺伝子を一度に調べる

がん遺伝子パネル検査システムは、2023年11月現在、5つの製品が保険適用となっている。

そのうちの一つは、国立がん研究センターが長年にわたって開発してきたものだ。


コンパニオン診断薬が一つか二つの遺伝子を調べるのに対し、がん遺伝子パネル検査では、がんに関係する数十から数百個もの遺伝子を一度に調べる。


ただし、コンパニオン診断薬とは異なり、この検査で調べる遺伝子のなかには、分子標的薬が存在するものも、存在しないものも含まれている。

そして、この検査を保険で受けられるのは、標準治療をすべて行って、これ以上、治療の方法がないとなった患者さんに限られている。


標準治療を終えたあとに「次の可能性」を探る

この検査は、次世代シーケンサーというDNAの配列を読み取るための装置を使って行い、得られたデータを大勢の専門家が議論して遺伝子異常とがんの関係を判断する。

標準治療を終えた患者さんでも、がん遺伝子パネル検査を受けて別の遺伝子の異常が見つかり、それに合った分子標的薬が存在すれば、その薬で治療を続けられる可能性がある。


また、見つかった遺伝子異常に対して、まだ承認されている薬はないが治験中の薬がある場合には、治験に参加できる可能性がある。

(治験とは、薬の承認申請をするために、患者さんの協力を得てその薬の効果を調べる臨床試験のこと)


ただし、がん遺伝子パネル検査で遺伝子異常が見つかるのは検査を受けた患者さんの半分ほどであり、別の薬での治療や治験への参加につながるのは10%程度とされている。


現時点でもっとも効果が高いのは標準治療であり、がん遺伝子パネル検査は、標準治療で効果が得られなくなった場合の「探索的な治療」のために行われる。そのため、標準治療をすべて終え、この検査をほんとうに必要とする患者さんに対してだけ、保険が適用されることになっている。

コメント;

タイトルには「健康保険で『遺伝子検査』が受けられる日がやってきた」と書かれていますが、ハードルは結構高そうです。

まずは、標準治療をしましょう、とも解釈されます。

標準治療の副作用は多くの方はご存知の話です。

しかし、分子標的薬にも、効果は別として副作用があるのです。

参考

がん薬物療法の副作用とは?

https://survivorship.jp/cancer-pharmacotherapy/sideeffect/01/01/#:~:text=%E5%88%86%E5%AD%90%E6%A8%99%E7%9A%84%E8%96%AC%E3%81%AF%E3%80%81%E8%96%AC,%E3%81%AF%E5%80%8B%E4%BA%BA%E5%B7%AE%E3%81%8C%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

引用・一部改変

BLUE BACKS 「がん」はどうやって治すのか(国立がん研究センター 編)

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