糖尿病患者は「薬剤支出に見合う恩恵」を享受せず
糖尿病患者は「薬剤支出に見合う恩恵」を享受せず 米国の実態調査
https://medical-tribune.co.jp/rensai/articles/?blogid=11&entryid=571026
ばかにならない糖尿病治療薬のコスト
日本の処方薬売り上げを見ると、多くの抗がん剤が上位を占める中、糖尿病治療薬もトップ20内に3剤がランクインしていた。
一方米国では、糖尿病治療薬への支出額高騰を、「臨床転機」という観点から「要検討」と主張する論文が現れた。
米国における糖尿病治療薬への患者支出は、想像以上に急騰していた。それに見合うだけのメリットを、患者は享受できたのだろうか。
糖尿病治療薬支払額は2012年以降に急騰
最近出た、米国の論文では、1年・1人当たりの糖尿病治療薬支払額は2000~22年に、335%も増加していた、という結果が出た。
ただし、この上昇は一定のペースで続いたわけではなく、2000~12年の上昇幅は平均して29米ドル/年と、比較的穏やかだった。しかし2012年以降、事態は一変する。上昇幅は年間平均224米ドル/年へ跳ね上がった。
支出急騰の主因は「新規非インスリン製剤」
一体何が起きたのかを、糖尿病治療薬別に検討した論文がある。
対象となった薬剤は
① 従来経口薬(メトホルミン、SU薬、チアゾリジン系薬、αグルコシダーゼ阻害薬、グリニド薬)
➁ 新規非インスリン製剤(GLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害薬、DPP-4阻害薬、アミリン誘導体、およびこれらを含む配合剤)
➂ ヒト・インスリン製剤
④ インスリン誘導体
の4種類である。
解析の結果、2012年以降の治療費支出急増をもたらしたのは、「新規非インスリン製剤」への支払い増加が主因だった結論づけられた。
「新規非インスリン製剤」への支払額増加幅を追うと、2005~14年には1人当たり36米ドル/年だったが、2014~22年には204米ドル/年まで急騰していた。
「従来経口薬」と「ヒト・インスリン製剤」への1人当たり年間支出は、2014~22年にかけておおむね減少傾向を示し、インスリン誘導体は2013~22年まで、1人当たりほぼ64米ドル/年で一定だった。
同期間の血糖管理は改善せず
ではこの期間、米国における血糖管理はどれほど改善されたのか。
米国民健康栄養調査(NHANES)の解析した論文の結果は、「近年の血糖管理値達成率は、良くても現状維持、あるいは悪化」と評価する。
その論文によれば、米国糖尿病患者における「HbA1c<7%」達成率は、1999~2002年の43%から07~10年には52%まで上昇したものの、15~20年には48%まで低下していた。
コストが上昇したのになぜ臨床転帰の改善につながらないのか、今後究明する必要があるだろう。
合併症入院も改善せず
米国糖尿病例の臨床転帰については、さらに興味深いデータがある。糖尿病性合併症による入院率の推移だ 。
公的入院患者データベース(NIS:全国入院例標本)を用いた解析結果では、 「心筋梗塞」以外の糖尿病性合併症入院はいずれも2010年前後を境に、増加する傾向にあった(糖尿病性緊急症は2000年から一貫して増加傾向)。
糖尿病治療薬への患者支出額は2000年から2022年にかけて300%以上高騰したにもかかわらず、全体としての転帰はさほど改善していなかった形である。
特に目を引くのが「心不全入院」だ。2012年を境に急増した。
年齢層別に見ると「75歳以上」での増加幅が大きい。
一方、「心筋梗塞」「脳卒中」「末期腎不全」「下肢切断」では、2010年前後からの増加傾向が観察されたのは主に「65歳未満」だった。
Sこの世代に「医療保険未加入」や「十分な償還が受けられない保険加入」者が多い可能性がある。
つまり、そのような例では、糖尿病治療薬の高額化に伴い、治療中断に至った、あるいは当初から治療を放棄した例が多かったということだろうか。
ともあれ、保険制度の異なる日本では心不全入院の推移も含め、どのような実態となっているのか。こちらもぜひ知りたいところである。
コメント;
これはあくまでも米国での実態調査の結果であり、保険制度が異なる日本を含めた諸外国にあてはめることはできません。いずれにしろ、糖尿病治療の結果としての細小血管、大血管障害の改善と、それに伴う心血管イベント改善というアウトカムの検討は重要です。
医療経済学の観点からの「コストパフォーマンス」についての論文は、米国では以前から伝統的に発表されて来ました。日本はどうかというと、昔から現在にいたるまで軽視され続けて来た分野です。
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