投稿

7月, 2024の投稿を表示しています

健康保険で「遺伝子検査」が受けられる

  健康保険で「遺伝子検査」が受けられる日がやってきた https://gendai.media/articles/-/121332?imp=0 がんにかかる人は増加しているが、死亡率は年々下がり続けている。 「がん治療」の進化が著しいことが大きな要因の一つだ。 一方で、患者側の最新医療に関する知識がアップデートされていないばかりに、手遅れになってしまうケースも残念ながら少なくない。 「薬が効くかどうか」を検査で調べられる 遺伝子タイプでがんを分類することは、治療上、大きな意味がある。 遺伝子の検査は健康保険で受けられる場合と、自費で行う場合がある。 現在、健康保険で検査できる遺伝子は、その遺伝子の異常に対する分子標的薬が保険収載されている場合に限られている。 言い換えれば、ある分子標的薬が効くかどうかを診断するために遺伝子の異常を調べる場合にだけ、健康保険で遺伝子の検査をすることができる。 このような遺伝子検査に用いる診断キットを、「コンパニオン診断薬」と呼ぶ。 コンパニオン診断薬で、ある遺伝子に異常があるかどうかを調べて異常があった場合、その遺伝子異常に合った分子標的薬を使った治療が標準治療となる。 薬が効かなくなる「薬剤耐性」問題 コンパニオン診断薬で該当する遺伝子異常がないとなった場合は、ほかの治療法を検討することになる。 残念ながら、分子標的薬を長く使っていると、だんだん効かなくなってくることがある。(がんの薬剤耐性) 薬剤耐性が起こるのは、がんが薬の攻撃から逃がれるために、遺伝子を変化させるからだ たとえば分子標的薬は、異常を起こしている遺伝子からできるタンパク質の「ポケット」に結合して、そのタンパク質の働きを抑えるものが多いのだが、がんは遺伝子を変化させてポケットの形を変えてしまう。 そうなると分子標的薬は結合できなくなり、薬が効かなくなってしまうのだ。 ただし、薬剤耐性が起こった場合、変化したがんに合わせた別の薬を使える場合がある。 がんに関係する遺伝子は200~300個ある 現在の遺伝子検査は、がんの発生に関わる遺伝子異常を調べるものがほとんどだが、がんの進行や転移などに関わる遺伝子異常も知られてきており、がんに関係する遺伝子は200~300個あると考えられている。 一人ひとりのがんは、これらの遺伝子のタイプがみな異なり、「個性」をもっている。 が

肝臓や筋肉、心臓の「第三の脂肪」

肝臓や筋肉、心臓の「第三の脂肪」 たまりやすい人は? 皮下脂肪、内臓脂肪に続く第三の脂肪といわれているのが「異所性脂肪」。肝臓や筋肉、心臓などにたまり、脂肪肝や糖尿病、心筋梗塞などを招く。 40歳以上の男性、閉経後の女性は特に注意が必要となる。 脂肪はたまる場所によって3つに分けられる。 皮膚の下の「皮下脂肪」、腸などの周りの「内臓脂肪」、そして本来たまるはずのない場所に蓄積する「異所性脂肪」。 皮下脂肪に収まりきらない脂肪が内臓脂肪になり、それでもあふれた脂肪が異所性脂肪になると考えられている。 もともと脂肪は脂肪細胞に蓄積されるものだが、異所性脂肪の場合は臓器の細胞内に入り込むため、臓器自体の働きが阻害されてしまう。 糖尿病や狭心症などを招く その代表が「脂肪肝」。 肝細胞に脂肪がたまってフォアグラのような状態になり、徐々に肝機能が損なわれる。 運動不足や脂肪のとり過ぎから、筋肉に脂肪がたまる「脂肪筋」もある。 筋肉は糖を貯蔵する最大の臓器だが、脂肪筋になると糖を取り込むインスリンの働きが低下し、糖尿病を招きやすくなる。 心臓にたまる異所性脂肪も注目されている。 肥満が進むと心臓周囲に脂肪が蓄積し、さらに心臓の血管の内外や心筋細胞にもたまってくる。 それが長年にわたって心臓を障害し、動脈硬化を促進したり、心筋細胞を線維化して硬くしたりする。 その結果、狭心症や心筋梗塞、心不全、不整脈のひとつである心房細動が起こりやすくなる。 最近の研究では、腎臓周囲にたまる異所性脂肪(脂肪腎)が慢性腎臓病(CKD)の発症リスクを上げることもわかった。 コメント; 肝臓と腎臓は隣接臓器です。腹部エコーで脂肪肝の診断をする際には、肝臓と腎臓を同時に描出して、腎臓に対する肝臓のエコーの濃淡で診断します。 (肝腎コントラスト) したがって、腎臓周囲の脂肪は両者の間隙を計測すれば簡単に把握できます。 太った人ほどたまりやすいが、そうでない人も注意 異所性脂肪は太った人ほどたまりやすいが、そうでない人も油断できない。 日本人は欧米人に比べ、遺伝的に皮下脂肪の貯蔵量が少ないため、異所性脂肪がたまりやすい。 実際、見た目はさほど太っていないのに脂肪肝や脂肪筋になっているケースは珍しくない。 では異所性脂肪が蓄積しているサインとは何か。 内臓脂肪が多い人は異所性脂肪も多い可能性があるので、お腹周

心不全にスタチンを推奨できない理由

心不全にスタチンを推奨できない理由 https://www.carenet.com/news/general/carenet/47680 静かに忍び寄る心臓悪液質とは 心臓悪液質とは、心不全において負の窒素・エネルギーバランスが生じ、骨格筋の減少を伴った体重減少をきたす予後不良の病態である。 この患者割合についての日本人データは乏しいが、欧州臨床栄養代謝学会議(ESPEN)のガイドラインによると、世界ではNYHAII~IV分類の12~16%に存在していると言われている。 心不全患者の10人に1人が予後不良患者に該当し、このような患者の8割強はフレイルや低栄養を呈している。 心臓悪液質をどのように疑うのか 心臓悪液質の診断基準は存在するものの、これを簡便に用いることは非常に難しい。 アルブミンや体重などを含むGNRI(Cut off 95.3)、体重減少率の一部がオーバーラップするMNA-SF(簡易栄養状態評価表、Cut off 9)や基本チェックリスクスコア(Cut off 12)の3つの指標が強く関連したというデータより、これらのCut off値に引っ掛かる患者は悪液質を疑う。 心臓悪液質は“浮腫”の存在が厄介 がん悪液質とは異なり、“浮腫”の存在が厄介な心臓悪液質。 これは、うっ血性心不全による変化の一つとして腸管浮腫が出現し、さらには腸管浮腫も心不全の増悪や心臓悪液質の進行を助長する 、という相互関係による影響と考えられている。 この心不全で生じる腸管浮腫が、バリア機能を破綻しリポポリサッカライド(LPS)産生を招いているという。 一方で、LPSにはコレステロールに結合する機序も考えられており、LPSが炎症性サイトカインを惹起するレセプターに結合する前にコレステロールと結合してしまえば、悪液質の進行が抑えられる。 心不全患者にはスタチンを推奨しない理由 心不全における総コレステロールと予後の解析では、コレステロール値が高い患者の予後が良いと示されたほか、心不全で問題となる左室収縮能が低下した例での血清コレステロール低値や心筋梗塞患者の低栄養によるLDL-C低値では予後が不良であることも報告されている。 また、心不全ではうっ血(後方障害)のほかに、血液の拍出量低下(前方障害)が問題になるが、腸管血流低下によってもLPS上昇が引き起こされる。 血流障害は炎症を上げ